台帳2019を基に作成したグラフ

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図1.⼯法別発電所数、出⼒数の⽐率

発電所数は713ヶ所と、前回調査の553、前々回の220にくらべて、さらに大きく伸びた。これは年を経た成果というよりも調査回答者が増えたことが貢献している。発電所数では屋根上、出⼒数では野⽴てが、太陽光市⺠発電所の主⼒。



図2.直近6年の発電所⼯法別の設置数、出⼒数の推移

(⻄暦は発電開始年度)

2014年度以降は減少の一途である屋根上発電を、2016年度までソーラーシェアリング、2017年度まで野⽴てが、規模の増大をともなって懸命に補っている。平均出⼒数は野⽴て・ソーラーシェアリングとも2017年度に大きなピークが存在している。



図3.発電所の設置数、出⼒数の推移

台帳プロジェクトチームの協議により集計基準を⾒直し、また回答数が増加した結果、発電所数・出⼒数ともに 2015年度がピークのグラフとなった。その内訳は、出⼒数に限れば2014~2017年度は⾼圧が優勢なものの、発電所数に限れば低圧が市⺠発電所の「主役」を取り戻した形になった。これは、調査を進めていくうちに、パワコン50kW未満かつモジュール50kW以上という発電所が、かなりの数で⾼圧→低圧へと再集計された結果による。



図4.2019年度までの出⼒数の累積値

(⻄暦は発電開始年度)

2019年度の累計値の延びが⽌まったかに⾒える要因のひとつに、4~7月の4ヶ月間しかデータ集積がないことを挙げられるが、この影響を割り引くと、2019年度に⼊っても市⺠発電所の設置の延びは⽌まっておらず、2018年度とともに、その主役は低圧であることに注目したい。



図5.パワコン容量と発電容量の⽐較

当台帳でソーラーの「過積載」と定義する発電所の⽐率は、全体の19%にも達した。「推定過積載」との合算で25%になった。乖離率が最大のものは、モジュール容量 ÷ パワコン容量の割合がなんと2倍を超過している。



図6.「過積載」「推定過積載」の直近10年間の推移

(⻄暦は発電開始年度)

ソーラーの「過積載」と呼ばれる事例が2013年度から台頭し、増加の一途をたどっていることを表している。パワコン性能の向上および、モジュール価格の低下によって、新しい「常識」も生まれつつあるため、引続き「パワコン容量不明」の割合を減らし、研究を深めていきたい。



図7.直近10年間の施⼯単価の推移

(⻄暦は発電開始年度)

今回の調査で、⾼圧と低圧の差がほとんど⾒られないグラフとなった理由は、モジュール50kW以上かつパワコン50kW未満という発電所が、かなりのボリュームで⾼圧から低圧へと再集計された影響が大きいと思われる。また毎年の「施工費低下」は、左グラフ(モジュール容量を分⺟とした値)と右グラフ(パワコン容量を分⺟とした値)では様相が異なり、モジュールの過積載を採用する現場では、さほど施工費低下は生じていないようだ。



図8.系統接続費用の推移

低圧連系と⾼圧連系に分けて、系統接続費用の経年変化を追っているもの。縦軸は該当発電所数のパーセンテージで、下層に移るにしたがって⾼い費用を払っている。回答数こそ少ないものの、2018年度においては8割弱の低圧発電所が30万円を超える系統接続費用を負担している。



図9.規模別系統接続費用

系統接続費用について、価格帯ごとに合算した発電所数をグラフ化。地域差を確かめるため、東京、千葉、大阪、滋賀の4都府県についても抽出している。系統接続費用については、新しい回答が少なく、前回調査とほぼ同じような結果に。低圧では、都市化の進展に応じて費用の相対的安値が期待でき、⾼圧では、都市部でも⾼額の系統接続費に備えないといけない。



図10.市⺠発電所の設置場所

ソーラーパネルを設置した建物がどのような施設か(または設置している土地がどういう性質か)の分類。今回「その他」は「その他・無回答」とした。前回調査と⽐較すると発電所数では「学校」「保育園・幼稚園」「無回答」が増え、増えた無回答の大半は野⽴てソーラーだった。発電出⼒数では、転用農地を含む「農地等」の割合が今回も他を圧倒した。



図11.市⺠発電所の設置場所の推移

(⻄暦は発電開始年度)

前図10「施設・敷地の用途」の経年変化。ソーラーシェアリングの進展、前向きな⾃治体による転用などを推進⼒として、農地の発電所への利用拡大&転用が、2015~2017年度に活発に⾏われたが、2018年以降は動きが滞っているように⾒える。その他の施設・敷地では、2018~2019年度の回答数が少なく、一定の傾向をつかむことは難しい。



図12.市⺠出資、助成⾦、⾦融機関融資

(小数点1位未満四捨五⼊)

第⼆種⾦融商品取引などの「市⺠出資」が資⾦調達方法のトップであることは、前回調査と変わらないが「⾦融機関融資」や「⾃⼰資⾦」も盛り返しを⾒せた。これは近年の傾向であるとともに、調査回答数の増加が影響している。これら3つに「助成⾦」を加えた4⼿法を中⼼に、さまざまな資⾦調達方法を組み合わせた発電所建設が今後も続くものと思われる。



図13.市⺠発電所とEPC事業者の動向

EPC事業者(地域の工務店など)の所在地と回答者である発電事業者のそれの一致度合から「市⺠発電所が地域経済を活性化する」と示そうとするグラフ。「同一市区町村」「同一都道府県」を合わせた「地元への工事発注率」は、前回調査に続いて約90パーセントの⽐率をキープした。ただし回答数が少ないとはいえ2019年度の地元発注率は6割台に下がるという変化の兆しも。



図14.設置費用&運転費用年報の提出状況

2017年度から追加した項目で、回答を必須とはしていないものの、多くの回答が寄せられた。設置費用年報では2年前と⽐較して「未提出」が大きく減り、新FIT制度の効果を感じさせる半面、提出していない発電所も1割台(運転費用年報も同様)存在し、提出義務の形骸化をも感じさせる。「対象外」と答えた発電所の多くは、FIT制度開始の前から稼動している10kW未満のものだった。



図15.売電先の現状とその動向

(出⼒数=kWは小数点未満四捨五⼊)

回答率は 7割強だった。注目すべきは「新電⼒会社」への売電が、前年の1割未満と⽐較して12~13パーセントへと拡大したこと。しかもクロス集計表によると、新電⼒会社から更なる売電先の乗り換えは、どの発電所も検討していない。乗り換え検討の項目では、発電所数で15パーセントが「検討している」のに対し、出⼒数でみた割合がその倍以上、33パーセントなのも特筆される。



図16.遠隔監視と保守体制

FIT 法(電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法)で発電事業者は、事業計画のほか「維持運営体制」を整えてから設備認定を申請することになっていて、その維持運営体制の中には遠隔監視(義務ではないが望ましい)やメンテナンス(義務)が含まれる。回答数が4 割程度増えたにもかかわらず、各回答の⽐率が前回調査とほぼ同様のグラフ群になった。


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