市民発電所の事例紹介


事例01

東京都小平市

こだいらソーラー市民発電所むさし

 

設 置 者:NPO法人こだいらソーラー

発電出力:13.3 kW

縦横に広がる地域の団体連携と

市民電力のネットワークを活かして

 

 こだいらソーラーの5機目の太陽光発電所となる「むさし」は、2016年5月に稼働を開始しました。

 

 これまで自然保護やごみや地球温暖化防止などにさまざまな市民活動として取り組んできた市民が、3.11原発事故をきっかけに、遠くの巨大なエネルギーに頼るばかりではいけない、市民の力で地域にクリーンなエネルギーを増やそうと、NPOこだいらソーラーを宣ち上げ、市民共同発電所づくりに取り組んできました。

 

 こだいらソーラーの市民発電所は、すべて民間事業者からの屋根借り、すべて設置費用は 市民資金、すべて発電した電気は再エネ小売をめざす新電力に売電していることが特徴です。災害時には、自宣運転に切り替えて、非常用エネルギーの供給拠点ともなることを、屋根オ ーナーさんと約定しています。地域分散型の発電所をまちづくりの資源、シンボルとして、エネルギーシフトの啓発活動に活かしています。市民に再エネを選ぼうと呼び掛けているパ ワーシフトキャンペーンにも参加し、消費者に最も身近な発電所として、市民がつくった再 エネを消費者に届けるために、再エネ新電力との連携をつくっています。

 

 3号機を載せている障がい者福祉団体の紹介で障がい者リハビリ施設の屋根をお借りすることとなり、むさしは地域の市民活動のネットワークの広がりにも支えられています。

 

また、むさしの開設は、市民電力事業のネットワークから生まれた、市民宣の設置支援事業をめざすたまエンパワー(株)との連携によって実現しました。地域のニーズを開拓する私たち市民電力団体のチームと施工事業者のチームをそれぞれにつくって繋ぐことで、一緒に技術的な課題や、団体間連携の課題に、具体的な事業に即して取り組んでいこうという事業です。たまエンパワーの共同仕入れによるパネルや周辺機器、保険やメンテナンスも含めての太陽光発電設置のパッケージはエネフローラと名付けられており、むさしは、このエネフローラの第一号でもあるのです。



事例02

神奈川県大磯町

カトリック大磯教会「みんなの発電所ソラ」

 

設 置 者:一般社団法人大磯エネシフト

発電出力: 14.28 kW

お日さまの電気でふくしまっ子を支援

 

 海と山、自然に恵まれた神奈川県大磯町。閑静な住宅街にあるカトリック大磯教会の広い庭の一角に福島の子どもたちを継続的に支援する「みんなの発電所ソラ」があります。運営主体は3.11原発 事故後、エネルギーの勉強会を重ね町民有志で立ち上げた一般社団法人大磯エネシフト。1号機は、2014年に、大磯町のマンションの屋上に設置が実現しており、みんなの発電所ソラは2号機になります。

 

 2012年から大磯教会ではじまっていた福島の子どもたちの保養に関わってきたメンバー らが自然エネルギー普及そして、保養の支援を長く続けるための手段として、FITによる太陽光発電所をつくることを計画。ここにぜひつくらせてほしいと大磯教会の方に相談。賛同してくださった教会運営委員会を通じて土地を所有するカトリック横浜教区と交渉を2年越しで続けました。はじめての事例でしたがこの発電所の趣旨を理解していただき、土地を5年間無償提供ののち状況を確認して更新する条件で2015年に開設することができました。電力自由化を機に、2016年からは、売電先を、新電力生活クラプエナジーに変更しています。

 

 原発事故後、日本カトリック司教団は「尊いいのち、美しい自然を守るために原発の廃止をいますぐ決断しな ければなりません。今すぐ原発の廃止を」と(日本に住む全ての人々に対し)呼びかけていました。それだけに「みんなの発電所ソラ」には「福島を忘れない」シンボルにしたいという思いも込められています。

 

 総事業費は約510万円で寄付と私勢債、金融機関の融資(動産担保)で調達しました。設置場所は松林の一部がマックイムシで枯れ、雑木がうっそうとして不法投棄や草刈りで苦労してきた南斜面です。今はパネルまわりに香りのいいハープや毎年花を咲かせる多年草を植え、道をはさんだ県立大磯高校の生徒や散歩で通りかかる方にも楽しんでもらえる「ソーラーガーデン」をめざしています。



事例03

東京都町田市町田

町田市民電力太陽光発電所1号

 

設 置 者:まちだ自然エネルギー協議会

発電出力:15.12 kW

生協との連携が実る!新電力売電も実現

 

 市民の力で町田を自然エネルギー100%の街にして持続可能な地域社会をめざすNPO法人「まちだ自然エネルギー協議会」の事業部門として、2017年7月に「町田市民電力株式会社」を設立しました。2018年3月には町田市内初となる市民発電所1号機を、新規オープンした生活クラプ生協・東京の福祉複合施設「生活クラプ館まちだ」の屋上を賃借して設置し、同年6月より事業開始しました。

 

 今回のプロジェクトは、生活クラプ関連団体ではない地域市民の設立した当社を、生活クラプ関連のNPO法人「エコメッセ」とまちだ自然エネルギー協議会が生活クラプとの仲立ちをすることで実現しました。この発電所が地域や立場を越えて市民の連携を紡いでいくことになります。また発電した電気は生活クラプエナジー(株)に全量売電しており、施設入居者が生活クラプエナジーの電気を購入することで、間接的ながら電気の地産地消も実現しています。また、災害時の非常用電源としても役立つことが可能となっています。

 

 将来を担う子どもや孫たちによりよい末来を残すためには、再生可能エネルギーによる発電の普及・拡大を「市民の力」で広める必要があると考えています。市民の力とは、資金を提供していただく市民とのつながりや地域コミュニテイのつながりを強めたり、そこで暮らす市民の生活の質を向上したりするための「力」と考えています。このため発電所建設の資金調達として、市民の一人ひとりの思いと力を合わせた「市民のみんなの思い」基金として1口10万円の社債(少人数私勢債)を発行したところ、44名の市民の皆さまが引き受けてくださり、上限49口の満額調達を達成しました。貴重なお金を当社にお預けいただく市民との関係を大切にするため、事業利益を社債利息として還元するだけでなく、発電所の見学会や交流会の実施なども計画しています。

 

 当社はこれからも「市民の力」の一員として、持続可能な地域コミュニテイづくりに資する市民発電所建設を進めてまいります。



事例04

鳥取県鳥取市

鳥取県立図書館・公文書館発電所

 

設 置 者:株式会社市民エネルギーとっとり

発電出力:53 kW

遠隔監視システムが陰の影響を早期発見し、改善


 私たちはくらし(エネルギー、お金、食など)の地産地消・産消連携にこだわり、2013 年、エネルギー自立の地域づくりを呼びかけ、市民共同発電所づくり をスタートしました。1 号機の建設資金(10万円・ロ×49ロ)は、1万円/ロ・年を10年間、現金または県産品で返済しています。2〜5号機(計367kW)の建設資金は、地銀融資、市民出資、少人数私勢債、寄付などを組み合わせ、8割を県内から調達しました。

 

 エネルギー自立の地域をつくるには、発電所が元気に安全に、地域のために発電を続けることがとても重要です。1号機はシステムメーカのモニターで、2〜5号機は(株)おひさま進歩エネルギーのおひさまモニターで、発電状況を遠隔監視・管理し、状況に応じて現地を確認しています。

 

 完成からひと月半が過ぎた2017年5月、5号機鳥取県立図書館・公文書館発電所(53kW)のPCS2台の累積発電量が、他のPCSより低いことがデータからわかりました。施工業者に相談すると抑制と陰の可能性をあげ、整定値を1V変え様子を見ることにしました。快晴日の発電状況を再び調べたところ、改善がみられません。監視システムに蓄積されている発電データ(累積発電量、10分毎出力等)をPCS 毎に丁寧に比較すると、日の出〜10時ごろに出力が低いPCSがあります。

 

梅雨明けの7月、明りとりによる陰の影聾を施工業者と現地検証し、8月に配置を改善。陰の影聾を放置すると、発電量が減るのみでなく電気抵抗による発熱でモジュール自身が損傷する原因になります。継続的で丁寧な発電状況の把握・検証が不具合の回避や早期発見につながることを痛感、ヒトの体と一緒ですね。

 

 野立ての3号機では、地震や停電の際、安全装置が働き逆潮流を遮断することがありますが、モニターによって判断材料を得ることができ、早期の現地対応や無駄足を省くことにもつながっています。3〜5号機が生む鳥取産の電力は、(株)とっとり市民電力(※)へ売り、地元の家庭や会社に届けています。国策といわれてきたエネルギーをさらに分権化・分散化し、くらしの産消連携を進め、当事者の環を拡げる活動にこれからも取り組みます。

 

(※)鳥取ガス9割、鳥取市1割出資、2015年8月に設立。



事例05

東京都江戸川区

えど・そら 3 号機

 

設 置 者:NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ

発電出力:22kW

住宅地の立体駐車場に野立て?

 

 東京·江戸川区、区役所からほど近い住宅地の中に「NPO法人足元から地球温暖化を考える市民ネットえどがわ」が建設·運営する太陽光発電所があります。名前は「えど·そら 3号機」。同法人による3番目の発電所で、2016年12月から発電を開始しました。

 

 この発電所の特徴は 2つあります。ひとつは住宅地の立体駐車場に建設されたこと、もうひとつは資金調達手段に無配当出資を採用したことです。

 公共交通機関に恵まれた都市部の住宅地では、近年のクルマ離れも手伝ってか、自家用車を所有する家が少なくなっています。そのため立体駐車場の 2階部分に契約車が全くいない状況が続いていました。駐車場に土地を貸しているオーナーとしては何かに有効活用したいと考えていて、その情報を得た同法人が発電所設置を持ち掛け、実現しました。ただ、周囲を住宅に囲まれているため、パネルの反射等でご迷惑をかけないよう、パネルにはシリコン多結晶製ではなく、光を反射しない ClS 金属化合物製を選んでいます。

 

 設置パネル 28kWに対して建設費用は 640万円でした。既に 1号機、2 号機の建設費用を疑似私募債(個人からの借金)で集めた同法人にとって、ほかの資金調達手段はないかと考えました。そこで、採用したのが「無配当出資」です。本来、出資は法律上金融商品として扱われ、取扱資格を持つ金融機関でないと募集できません。しかし、金融商品取引法では「利子を配当しない場合は金融商品として扱わない」とあります。そこで、利子の無配当かつ元本の無保証をうたった無配当出資を 250万円自己募集しました。1口 5万円なので 50口です。また、地域の小松川信用金庫から 300万円の融資を受け、同法人が100万円を拠出しました。なお、信用金庫からの融資については、年利2%のうち0.5%を江戸川区から利子補給を受けることができました。



事例06

兵庫県宝塚市

宝塚すみれ発電所 5号機

 

設 置 者:非営利型株式会社 宝塚すみれ発電

発電出力:23.88kW 

牛乳会社への特定供給

 

 「宝塚すみれ発電」(兵庫県宝塚市、井上保子代表)では、近隣の丹波乳業(兵庫県丹波市)の工場屋根に設置した 5 号機において、同社への「特定供給」を実現しています。全量売電(発電所を設置した地域への貢献が少々わかりにくい)と比較して、電力会社の送電線網を伝わらず、文字通り「地産地消」の自然エネルギーを提供できるという大きなメリットがあります。 

 

 特定供給を実現できたポイントになったのが、無償提供された中古パネルの活用。大阪の市民電力団体から、別の市民発電所で使われていたパネル再活用の申し出を受けて、井上代表が丹波乳業への設置を提案しました。15円/kW と、同一エリアの大手・関西電力より安く供給し、「差額」は直接、丹波乳業の支援になります。 

 

 同社は「氷上低温殺菌牛乳」を製造し、安全な牛乳を求める消費者に人気が高い会社です。兵庫県内の10の消費者団体が設立した一般社団法人「みんなの低温殺菌牛乳協会」(神戸市、高石留美代表)は、丹波乳業の「応援団」的な存在で、特定供給の実現にも主導的役割を担いました。特定供給には、クリーンエネルギー100%の牛乳製造でさらなるファンを獲得してもらえれば、という高石代表の願いも込められています。 

 

 資金調達には、寄付型クラウドファンディングを活用しました。大手の「レディフォー」(東京都)と連携し、パネルの再設置等に必要な約300万円のうち、126万円を 62日間で集めることができました。



事例07

福島県南相馬市

再エネの里発電所

 

設 置 者:一般社団法人えこえね南相馬研究機構 

発電出力:30.3kW

半農半電で地域活性

 

 「東日本大震災と原発事故によって、私たちの地域は、農林産業の休業、商工業の事業所閉鎖や撤退、人口流出、コミュニティの分断など、様々な問題が起きてしまいました」というのは、「一般社団法人 えこえね南相馬研究機構」。

 

 そこで、再生可能エネルギーを復興のバネにしようと立ち上がりました。太陽光を、作物生育と発電とで分かちあうことで持続可能な半農半電を目指し、2015年に、福島県南相馬市の農地8ヶ所に合計332kW のソーラシェアリング設備を設置しました。 

 

 その建設コスト1億2千万円は、農家、地元金融機関がそれぞれ1/3を出資、残り1/3を新エネルギー庁の補助金で充当しました。償却に17年位かかる予定ですが、補助金の金額の1/2 を地域へ還元することを決めています。

 

 ここで紹介する奥村農園のソーラーシェアリング設備は「再エネの里」と呼ばれ、社団メンバーをはじめとするボランティアの皆さんの共同作業により2013年8月に完成しました。もっと農地を生かしたいし、原発保障依存の次の手を考え農地と農業を元気にしたい、など思いが一杯詰まった里になっています。また、そこでは子ども大人も一緒に遊ぶポニー乗馬体験も行われました。農家は安定収入を得られて後継者を育て、「半農半電」の新たな地域活性化のモデルづくりが行われています。



事例08

東京都調布市

調布ヶ丘地域福祉センター発電所

 

設 置 者:調布まちなか発電非営利型株式会社

発電出力:46.67kW

 

見やすいモニターが好評

 

 市の公共施設の屋根や屋上を借りて設置した太陽光発電所は、合計34ヵ所、総出力925kW と、メガソーラーに匹敵する規模。今回ご紹介する調布ヶ丘福祉センター屋上に設置した太陽光発電設備は出力46.67kW。同社の設備では 5番目に大きいものです。

 

 市民サークル用の集会室を多数備えた地域福祉センターということから、1 階には発電量を示すモニターを取り付け、市民の教育・啓発に役立てています。そこで終わりではなく、市内各所の発電状況のデータを集積し、これを活用した省エネの取組み(どんなところで無駄や節約の余地があるのかを検討し、設備の交換を進めていくなど)にもつなげています。

 

 事実上の「まちなかメガソーラー」が実現できたのは、調布市行政、市内事業者、金融機関など数々のステークホルダーで構成され、非営利型株式会社の母体となった「一般社団法人調布未来(あす)のエネルギー協議会」(調布えねきょう)の存在あってのことです。同協議会は、調布まちなか発電非営利型株式会社の発行する株式 1%を保有しますが、他の99%の意見よりも協議会の意見が尊重される約束があり、市民の意見が株式会社の経営に反映される仕組みになっています。また株式会社の収益は、毎年市と協議のうえ、この協議会を通じて環境教育や、次世代エネルギー事業の調査・研究などに拠出され、全て地域に還元されています。

 

 非営利型株式会社は、事業会社が剰余利益を株主に金銭で配当しないという会社形態で、その後いくつかの市民電力系事業会社のモデルにもなりました。



事例09

大阪府寝屋川市

ねやがわ市民共同発電所 2号機

 

設 置 者:NPO 法人ねやがわ市民共同発電所

発電出力:25.11kW

つなぎ融資として「日本公庫」を活用

 

 市民発電所への融資に前向きな金融機関といえば、地域密着型の信金・信組などが挙げられますが、資本金4 兆円以上の金融機関である「日本政策金融公庫」(日本公庫)からも、建設資金の融資を受けられます。

 

 「NPO 法人ねやがわ市民共同発電所」(大阪府寝屋川市)では、福祉作業所である「ワークセンター小路」の屋根を活用した「市民共同発電所 2号機」を設置するための寄付金・建設協力金が、2014年11月の期限までに目標額に達しなかったことから、日本公庫の「環境エネルギー対策資金」を活用。無担保10年返済で、800万円を利息1.7%で借り入れることに成功。翌年1月にはなんとか発電所点灯式の開催にこぎつけました。期限を延長した寄付金・建設協力金も、同月に目標額(920 万円)を達成できたことから、翌2 月には借入れを全額返済しています。



事例10

和歌山県東牟婁郡串本町

南紀自然エネルギー4号共同発電所

 

設 置 者:一般社団法人南紀自然エネルギー

発電出力:50kW(南紀)

農を通じたコミュニティ作りの夢に向けて前進


 「一般社団法人南紀自然エネルギー」(和歌山県東牟婁郡串本町)では、ソーラーシェアリングの下を市民農園として活用する「4 号発電所」の建設に、「日本政策金融公庫」(日本公庫)の融資を活用。同法人の仁木代表が日本公庫の担当者と「空き家の活用勉強会」で接点があったことから、相談はスムーズに進展。「自分たちの手作り発電所を『エネルギー』と『食』に橋をかけるものにしたい」というメンバーの願いを、2017年4 月に適えることができました。「エネルギーと食の自給、そして農を通じたコミュニティ作りを、一歩一歩進めたい」と、仁木代表は夢を語ります。

 

 市民発電所への融資に前向きな金融機関といえば、地域密着型の信金・信組などが挙げられますが、中山間地での市民発電所建設に、資本金4 兆円以上の金融機関である日本公庫の活用を検討してみてはどうでしょう。



事例11

秋田県にかほ市

生活クラブ風車「夢風」

 

設 置 者:一般社団法人グリーンファンド秋田

発電出力:1990 kW

風車がつなぐ「都市と地方」、「人ともの」

 

生活クラブ風車「夢風」は秋田県にかほ市で2012年 3月に発電を開始。グリーンファンド秋田は「夢風」の事業目的法人で、生活クラブ東京・神奈川・埼玉・千葉、NPO法人北海道グリーンファンド、(株)市民風力発電で構成しています。発電した電気は、(株)生活クラブエナジーに全量売電し、生活クラブ組合員や事業所に供給されています。

 

2013年に、にかほ市と生活クラブで「地域間連携による持続可能な自然エネルギー社会に向けた共同宣言」を結び、その具体化として以下のことをすすめています。

 

一つが、人的交流です。首都圏の組合員がにかほ市を訪れ、また、にかほ市から首都圏を訪問するなど、顔の見える交流を毎年行っています。昨年の交流人口は、年間のべ100人以上となりました。これらの費用は、主に「夢風」の売電収益でまかなわれています。

 

二つめは、にかほの物産の取組です。2015年度より生活クラブ組合員とにかほ市の生産者が共にオリジナル品の開発をすすめようと「夢風ブランド」開発活動をスタートしました。現在6品目を夢風ブランドとして生活クラブで共同購入しており好評です。また、「夢風」の建つ芹田地区では、生活クラブのトマトケチャップの原材料となる加工用トマトの栽培に取り組んでいます。

 

これら「夢風」をきっかけとした取組みによる間接的経済効果がより大きくなってきています。また、2017年度から「夢風」の利益をにかほの子どもたちに還元しようと、小学校での環境授業を行っています。昨年は小学6年生の2クラスが理科の授業として風車見学を行い、講師を生活クラブの組合員が担いました。

 

生活クラブは、エネルギーを道具に地方の人々と都市の組合員をつなげ、人と人の顔の見える関係づくりを進め、さらにこのことによって地域にお金が循環し、活性化にもつながるような自治のモデルをめざしています。



事例12

岐阜県郡上市

石徹白番場清流発電所

 

設 置 者:石徹白農業用水農業協同組合

発電出力: 125 kW

ダム不要の小水力で、持続可能な地域づくりに貢献

 

石徹白って読めますか?「いとしろ」と読みます。

長良川鉄道・郡上白鳥駅から1日3本しかないバスで標高500メートルの峠を越えると現れる、人口270人の小さな集落です。霊峰白山の参拝ルートに当たることからかつて山岳信仰の拠点として栄え、江戸期には白山中居神社を中心に参拝者の宿泊や道案内を行う御師の家が立ち並び、数千人の参拝客でにぎわっていたそうです。

 

明治以降は農業や製材業を営みながら、1960年ごろには1200人の人口を数えましたが、年々人口は減少。こうした事態に住民は2003年にNPO法人「やすらぎの里いとしろ」を立ち上げ、地域の歴史と文化を振り返りながら、恵まれた自然と環境の中で人々が共生できる地域づくりに取り組み始めました。

 

集落には、豊富な雪解け水を利用した農業用水が通り、糖度16%以上のとうもろこし「あまえんぼう」を育てています。この用水を、小水力発電として見える形で活用できるのでは、と2007年から様々な形の発電に取り組みました。そして実証実験を経て、集落全体の電力をまかなうような本格的発電所作りに取り組むことにしました。朝日添川(わさびそがわ)から取水している農業用水を落差110m落とし、そのエネルギーで小水力発電を行う計画です。

 

そのためには、上で水を貯めておくヘッドタンクや水を落とす導水管、発電機の設置などの工事が必要でした。さまざまな事業主体の検討を行った結果、地域にとってなじみのある「農業協同組合」を設立することになりました。

 

そこで、2014年に「石徹白農業用水農業協同組合」を設立。組合長には自治会長が就任し、17人の発起人たちと住民を説得した結果、全世帯103人が組合員となって出資してくれ、800万円の資本金が集まりました。発電所の工事費2億4千万円は、その75%を岐阜県と群上市からの補助金でまかない、残る6千万を自治会で積み立てた基金と日本政策金融公庫からの借り入れで確保しました。

 

こうして2016年6月「石徹白番場清流発電所」が発電を開始。出力は125 kW、FITによる売電価格はkWhあたり34円で、北陸電力から支払われる売電収入は年間2000万円を超えます。減価償却分の積立金や返済の利払いなどを除いても数百万円が残り、防犯灯の電気代や耕作放棄地の再生といった地域づくりに活かしています。

 

石徹白はどんどん変化しています。休眠していた農産物加工所が復活をしたり、Uターンした一家がカフェ&居酒屋をオープンさせました。自然豊かな石徹白を知ったUターン者は、10年間で14世帯43人にのぼります。集落では、2009年に30年後も小学校を残すという「石徹白ビジョン」を掲げましたが、達成の道筋が見えてきました。小水力発電による地域づくりは持続可能な地域づくりにつながっています。



事例13

福島県飯舘村

M田S藤・営農型太陽光発電所

 

設 置 者:飯舘電力株式会社

発電出力:57.24 kW

57.24kWのM田S藤・営農型太陽光発電所(「M田S藤」は農地提供者の名)

 

再エネで美しい村を取戻し、次世代に仕事を残す


「このままでは限界集落になってしまいます。何とか村に仕事をつくらなければならないという思いで始めました」と飯舘電力株式会社の小林稔社長は語っています。

 

ここ福島県相馬郡飯舘村は福島第一原発から30㎞にありますが、原発からの放射能の風をまともに受けてしまった村です。2017年3月、村の避難指示が解除されましたが、村民5754人、1810世帯(18年6月30日現在、住民基本台帳人口)のうち、2018年8月1日現在、村内居住者875人、世帯数446人(帰還人数766人、366世帯)です。「仕事を残しておけば、次の世代が何かを考えてくれるのではないか。若い人が戻って来た時に雇用の場を作り、地元でお金を回すには再生可能エネルギーしかない」と小林さん。

 

やがて、この志によって、18年5月の取締役会では太陽光発電設備が今年中に約60基、計約3000kWに達する見通しと、報告できるようになりました。その設備の4割近くはソーラーシェアリングが占めているのが特徴です。パネルの下には牧草を植え、牛を飼うことも検討しています。

 

飯舘電力株式会社は14年9月に設立。当初は出力1500 kWの大規模な太陽光発電を計画していましたが、東北電力の接続保留宣言で断念。その後、50 kW未満の小規模発電なら接続できると、15年5月に第一号基を特別養護老人ホーム脇の村有地を借りて建てました。同年7月には「太陽は昼だけだが、風は夜も吹く」と考えて、地権者の同意も得て、村東部の山林に2000 kWの風車を建てる計画を打ち出しました。しかし3ヶ月後、東北電力の担当者が内緒で教えてくれました。「接続するには送電線の増設や変電所の改修工事に約21億円の費用と5年以上の月日がかかる。今取り下げれば申込金20万円はお返しします」。資本金3250万円の零細企業としてはやむなく断念しました。

 

一方、「ソーラーシェアリングという方法があるよ」と教えてくれた方がありました。もともと農業をやっている人の集まりでも農業委員会の許可は難航しました。しかし、金融機関からの融資については、地元の信用金庫が協力的に融資してくれています。

 

「飯舘村の地元資本を先行し、地元や県内の技術を結集して新産業創出と若者の雇用を目標とし、再生可能エネルギーとしての太陽光発電事業、バイオマス発電事業、植物工場、研修施設の設置運営、世界に向けた情報発信事業、帰村拠点の運営事業等を行ない、飯舘村民の自立と再生を促し、自信と尊厳を取り戻すことを目指す」これが同社の目的です。



事例14

福島県喜多方市

会津電力雄国発電所

 

設 置 者:会津電力株式会社

発電出力:1メガワット

体験学習も可能なメガソーラー

 

2014年に発電を開始した雄国太陽光発電所(福島県喜多方市)は、「ご当地電力」の代表格である会津電力株式会社(同市、佐藤彌右衛門社長)の第I期事業計画のうち「雄国ソーラーパーク事業」の成果です。

 

遊休地を活用した50kW未満の「小規模分散型」ソーラー発電を得意とする同社ですが、雄国だけは経産省の「福島県市民交流型再生可能エネルギー導入促進事業」の要件として、約2.6ヘクタールの遊休地にメガソーラーとして計画され、経産省の補助金、地元金融機関融資により建設されました。ソーラー発電所は困難とされる雪深い土地ですが、パネル面を30度の傾斜にする、地面から2.5メートル以上の高さにパネルを設置するなどの工夫で、悪条件を克服しました。

 

発電所として見学者を受け入れるだけでなく、地域市民や子供たちの再生可能エネルギー体験学習施設を併設しています。ソーラー・風力・水力など再エネ発電の仕組みを、パネル展示、アニメ鑑賞、ペットボトルの工作などで学ぶことができます。オープン以来、1044名(2017年6月時点)が見学に訪れています(冬季は見学受付を休止)。磐梯朝日国立公園の雄国沼にも近い雄大な自然の中で、様々な研修会の開催も可能。

 

将来は、隣接する農地の「6次化事業」とも連携し、多くの市民の交流の場となることも構想されています。地元からは「産業観光スポット」として、全国レベルの来訪者を集める期待も高まっています。



事例15

千葉県千葉市

千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機

 

設 置 者:千葉エコ・エネルギー株式会社

発電出力:777.15kW

ソルゴーが繁茂する設備下

 

サツマイモの作付け風景

 

農業を化石燃料から解放

次世代ソーラーシェアリングをめざす

 

ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)といえば千葉というほどに、全国で最も導入件数が多い都道府県が千葉県です。既に県内では、匝瑳市飯塚地区のメガソーラーシェアリングを始めとして、自然エネルギーと農業を組み合わせた新しい取り組みが進んでいます。

 

そんな千葉県にある千葉市大木戸アグリ・エナジー1号機(千葉市緑区大木戸町)は、2018年3月に運転を開始した千葉エコ・エネルギーとして初とな自社保有の高圧規模のソーラーシェアリング設備です。発電出力は777.15kWで、多結晶60セルタイプのモジュール2826枚を1haの畑に藤棚式で均等配置しています。設備の設計は、これまで千葉エコ・エネルギーが関わってきたプロジェクトで得られた知見を最大限に投入し、モジュール配置や支柱間隔などを設備下で行われる農業に最適化したものになっています。

 

また、このソーラーシェアリング設備下では千葉エコ・エネルギー自身で農業を行っています。千葉市農業委員会の許可を得て法人として農地を賃借し、一般法人としての農業参入を果たしました。事業化の準備段階では、2名のスタッフがアグリイノベーション大学校という週末農業スクールに通い、農業経営から生産までの技術を習得して新規就農者となりました。主たる作物にはニンニクを選定していますが、他にもサツマイモ・落花生・ナス・サトイモ・夏いちご・シシトウ・明日葉など、広い畑をフル活用して様々な作物を栽培しています。

 

更にここでは、自然エネルギーを活用した次世代農業を実現するフィールドとして、「農業を化石燃料から解放する」というミッションを掲げた「アグリ・エナジープロジェクト」を展開しています。トラクタやコンバインの燃料など、農業に投入されるエネルギーのほとんどが化石燃料由来という現状に対して、これを自然エネルギーにシフトさせることで真に持続可能な農業の実現をめざしていきます。



事例16

東京都多摩市

たまでんH中学校発電所

 

設 置 者:多摩電力合同会社

発電出力:49.92kW

点検・清掃を市民イベントに

 

多摩市立の中学校屋上に設置した50kWの発電所です。2013年多摩市と包括協定を締結し、屋根借りの賃貸契約を結んでいます。生徒への地球温暖化防止教育(出前授業)、エネ協会員への再エネ啓発、無論建設費の回収を目的にしています。

 

私たちの歴史を紐解くと、3.11の翌4月、原発に依存しない地域社会を作りたいという市民の熱い想いが結集して多摩循環型エネルギー協会(通称:多摩エネ協)が発足したのが始まりです。その10月には事業会社として多摩電力合同会社(通所:たまでん)を設立し本格的に屋根借り太陽光発電事業に乗り出しております。

 

以来、多摩市内を中心に13施設約600kWの屋根上発電所を建設してきましたが、私たちの最大の特徴は、市民団体である”たまでん”が、それぞれの役割分担を守りながら、一体になって今日まで運営してきたことでしょう。多摩エネ協は広く市民に呼び掛けて会員を募り(現会員150名)、各種イベントの主催、たまでん債(市民債)の募集を通じての資金調達のお手伝いをすることなどの役割を担ってきました。たまでんの役割は限定されたメンバーで事業活動に専念することにより、思いを形にするために採算性・継続性・発展性を持った事業活動を行うことです。

 

写真は、多摩エネ協主催で会員に呼びかけて、清掃活動をしているところです。簡単にできる点検を含めて清掃活動は、多摩エネ協のイベントのひとつとして年中行事化しつつあります。開催時には、ホームページやメーリングリストで呼びかけます。会員以外の方の体験参加も大歓迎です。



事例17

千葉県市川市

いちかわ電力1号機つなぐ・つながる発電所

 

設 置 者:いちかわ電力合同会社

発電出力:5.4 kW

住宅街の未利用地! カーポートの屋根から発電

 

「NPO法人いちかわ電力コミュニティ」は、2016年12月に設立された、千葉県市川市のNPOです。地域の活性化や住民の安全・安心、そして子供達の未来のために、太陽光などの再生可能エネルギーを普及するため、地域に根ざした活動を行っています。

 

2018年5月16日に、晴れて第一号機「つなぐ・つながる発電所」の稼働がスタートしました!設置のために施設をご提供いただいたのは、市川市内で自立援助・児童発達支援をおこなっている社会福祉法人です。そのカーポートに太陽光パネル(5.4kW)を設置しました。

 

発電事業は、透明性確保のために別法人「いちかわ電力合同会社」が担います。再生可能エネルギー発電事業に特化する合同会社と、再生可能エネルギー事業の推進に向けた普及啓発・情報発信を行うNPOと、この両輪で持って地域の再生可能エネルギー活用を盛り上げていきます。

 

本事業は趣旨に賛同していただいた市民の方々や事業者にこの初期投資をサポートしていただくことで、実現に至りました。発電所の名前は、施設の子どもたちが一生懸命考えてくれました。

 

昼間に太陽光によって発電された電気は、この施設でそのまま使っていただきます。いちかわ電力合同会社には、電気料金より少し安い定額の設備使用料金をお支払いただき、社会福祉法人の運営を応援しています。いちかわ電力合同会社は太陽光で発電した余った電気を電力会社に発電する収益とあわせ、投資回収をします。15年を経過したら設備は施設に寄贈する予定です。

 

太陽光発電の設置によって、電気代の節約を通じて、施設で生活する子どもたちを応援するとともに、CO2を出さない環境にやさしい発電をすすめていきます。施設のホーム長の方からは、「楽しみが増えたね」と施設の皆で話していることや、出費を切り詰めながら生活する子どもたちからも「見ず知らずの方が応援してくれてありがたい」と感謝の声が上がっているとお話を伺っており、市民が市内の施設と連携して、共に助け合う事業となっています。



事例18

長野県上田市

信大SENI おひさま発電所

 

設 置 者:NPO 法人上田市民エネルギー

発電出力:49.98kW

相乗りくん。信州の上田のユニークな取組みです

 

上田は晴天率が高く、太陽光パネルは日本の平均より2〜3割増しほど発電します。相乗りは、英語でシェアです。相乗りくんは屋根をシェアします。住宅屋根に太陽光発電を設置するとき、自分の必要以上に屋根があれば他の人たちがお金を出して一緒にみんなで“相乗り”して太陽光パネルをつけるのです。

 

運営主体はNPO 法人上田市民エネルギー(藤川まゆみ理事長)。2011 年11 月事業開始。翌年7 月からのFIT 制度以前より余剰売電の屋根を活用して相乗りくんをスタートしています。相乗りしたい参加者はNPO に金銭を信託します。NPO は、そのお金を相乗りパネルの設置費用として屋根オーナーに再信託して、屋根オーナーが太陽光発電を設置します。参加者には売電成果を10 年から13 年間お渡しする仕組みです。NPO 法人が非営利で行なっていて、この契約形態を「市民信託」と呼んでいます。

 

全量売電が始まってから、住宅以外の相乗りくん発電所も増やしてきました。信州大学繊維学部のキャンパス内にも、大学の教職員や卒業生、そして地域の多くの方が参加し、49.98kW の信大SENI おひさま発電所が生まれました。

 

学生の環境委員会が管理をし、草対策は繊維学部が飼っている羊に任せています。羊は、ヤギのようにパネルの上に乗ったり柵を飛び越えたりもせず、おとなしいです。また、角度を10 度、20 度、30 度と分け、発電量の違いや雪落ち具合などを比較しています。大学と共同で今後も様々な実験をしていきます。

 

参加者は現在約200 人。長野県内県外が半々で、相乗りくんコミュニティを通した交流が生まれてきています。参加者はいつでも募集中です。ぜひ、ご興味のある方は上田市民エネルギーにご連絡ください。